建築士試験が変わる(3)将来の建築界、どう描くか 制度見直し「長期的視点が必要」

中央
 建築士を増やし、その先にある建築界の将来をどのように描くか―。改正建築士法は、学生が在学中に建築士試験を受験できるようにし、建築を志す若者を後押しする。ただ、日本の建築界を将来にわたって支える人材をどう教育・育成するかという課題は残る。日本建築学会の小野田泰明会長=写真=は「建築教育と試験制度の在り方を長期的な視点で考える必要がある」と訴える。  小野田会長は、東日本大震災の復興に取り組む中で、若者を呼び込もうと高校への出前授業などを精力的に続けながらも、廃業を決めた工務店を目の当たりにした。1級建築士の資格を持つ設計者・実務者として、担い手不足の深刻さを痛感している。  こうした経験から、建築士試験の受験機会を早める改正建築士法についても、人材獲得競争に勝ち抜く一手として理解を示す。一方、目先の担い手確保だけにとらわれ、長期的な視点を持たなければ、その先に建築に「豊かな未来はない」と警鐘を鳴らす。  建築は「100年先まで見越して空間をつくる仕事」だ。建築に携わる人材には、法令だけでなく、社会や経済、環境など幅広い知識と見識が求められる。日本の設計技術や、デザイン、工学を一体的に学ぶ建築教育には、国際的な強みもある。その強みを次世代につなぐ上でも、学生が幅広い知識や経験を得る機会を重視する。  小野田会長は、日本の国際的な地位が低下し、内需が縮小する中、日本が世界に誇る建築分野の強みを維持・発展させる必要性も指摘。学生が資格試験や就職活動にとらわれず、「安心して自分の可能性をトライアルできる社会」をどうつくるのか、議論を深めるべきだと訴える。  その上で、担い手不足に悩む実務側と学術側、双方の意見を取り入れるべきと考えている。「実務か学術かという単純な対立構造に落とし込むべきではない」という姿勢だ。実務者と教育機関がそれぞれの立場を越え、課題と知識を共有することで、より良い制度を探る必要があると指摘する。  教育機関にも見直すべき点はある。小野田会長は、「学生に本当に教えるべきことを教えられているのか、教育界が自らに問い直すべきだ」と話す。建築士の資格が、生命と財産に関わるものである以上、試験の水準を引き下げることはできない。大学で身に付ける基礎的な知識を生かしながら、学生が試験対策だけに時間を費やさずに済むよう、試験内容を「合理化」する必要があるとする。  日本建築学会が6月に国土交通省に提出した意見書では、科目ごとの合格を積み上げられる通年分散型の試験を提案した。学習の進み具合に応じて受験できれば、研究や設計、留学など学生時代の経験との両立もしやすくなる。  新しい試験制度は3年以内に始まる。制度をどう運用し、建築教育や試験制度の改善につなげるか議論しなければならない。小野田会長は「これまで積み残してきた建築教育と資格制度の課題を考え直す機会にできれば」と関係者に呼び掛ける。