インフラ「長期で評価を」 社会的割引率見直し議論開始
中央
国土交通省は10月7日、公共事業評価手法研究委員会を開き、公共事業の新規実施に先立って必要性や効率性を判断する「事業評価」の見直しに向けた議論を開始した。事業の将来的な効果を現在から見て評価する際に用いる「社会的割引率」を巡り、委員長の家田仁政策研究大学院大学名誉教授は、国土強靱化事業をはじめとした公共事業を念頭に「長期的な評価ができるよう、低めの割引率であるべきではないか」との考えを示した。
4月の経済財政諮問会議で金子恭之国交相(当時)は「公共事業の多様な効果を適切に評価できるよう、評価手法や社会的割引率の検討を進めたい」と表明した。政府が7月に決定した骨太の方針にも、公共事業の事業評価について、費用便益比だけに頼らない総合評価への見直しと、社会的割引率の見直しが盛り込まれた。
公共事業の評価では、事業に必要な調査・整備に要する費用の総額と、事業で得られる総便益を比べる費用便益比が重要な要素となっている。将来得られる便益を現在の視点に換算するため、社会的割引率が用いられる。
欧米では必要に応じて社会的割引率の見直しを実施している中、日本は制度を整備した04年当時の10年国債の実質利回りを参考とした4%を現在も適用。割引率が高いほど、事業で得られる便益が現在から見て目減りして費用に見合わなくなるため、新規に実施するハードルが高くなる。
7日の委員会では、社会的割引率の見直しを見据え、参考とする指標や見直しの時期が論点となった。
家田委員長は、備えるべき課題として気候変動の影響の深刻化を挙げ、短期的な金利や社会情勢の変化よりも「長期的な効果にインフラの軸足を置くべきではないか」と問いかけた。事業構想大学院大学の田中里沙学長も「すぐ効果の出るインフラと、流域治水のように長い時間がかかるものがある」と指摘。同志社大学大学院の大串葉子教授は、柔軟な割引率を設定する海外事例を紹介した。
費用と便益の比較だけでない、総合的な評価手法の在り方も議論のテーマとなった。インフラの新規整備だけでなく、維持管理・更新などの「インフラマネジメント」の重要性が増していることを受け、事業評価での取り扱いについても議論した。
京都大学経営管理大学院の小林潔司特任教授は「維持補修は事業評価より、行政的な評価の中で説明責任を果たすべきものだ」と述べた。
