AI時代の建設業(4) 受発注者対話 AIで円滑化 ASP搭載で自治体に波及

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 受発注者の情報共有システム(ASP)は、国土交通省だけでなく全ての都道府県・政令市の発注工事でも活用され、多くの現場を支える情報インフラとなっている。国交省は9月、ASPの機能に対話型AIを追加する方針を表明した。AIに質問して工事資料や基準類を自在に検索・参照できるようになれば、現場の意思決定は格段に迅速化する。国交省はASPを入口に、地方自治体や地域建設業にもAI活用を波及させようとしている。  ASPは、受発注者の間で工事関係書類の作成・提出を行うシステムで、直轄工事は原則、活用することとされている。全ての都道府県・政令市に加え、市町村でも250団体が導入するなど広く浸透している。国交省は、ASPが備えるべき機能要件に対話型AIを追加し、ベンダーに順次アップデートを促す考え。  このため国交省は、ASPベンダーで構成する建設情報共有システム協会(CISSA)と協議を進める。機能要件の詳細を詰めるため、直轄工事での活用を想定し、26年度中にもAIによる資料検索・確認を簡易的に試行検証する。共通仕様書や各種要領・基準類などの公表データと、対象現場のデータをAIに学習させ、受発注者の書類作成や意思決定をサポートする。  CISSAの平本孝範会長は、ASPへの対話型AIの実装について、AIによる工事情報活用の「最初のステップ」と見る。AIの能力を十分に生かすには、学習用のデータの蓄積・管理体制を整えることが重要になるためだ。  国交省は工事ごとに利用が完結するASPとは別に、事業単位で工程の進行や予算の管理を行うデータ環境「CDE」の構築を検討している。これを受けてCISSAは、工事の出来形や協議の履歴といったデータをASPからCDEに順次、蓄積するという将来像を国交省に提案。受発注者は情報流通基盤であるASPを介し、CDEに蓄積されたデータにAIを介してアクセスするイメージだ。  実現するには、現場に関わる各種データを誰が、どのような権限で管理するかを整理しなくてはならない。現行では、最終的な電子成果品の権利は発注者に帰属する一方、施工途中のデータの取り扱いは明確に定められていない。情報セキュリティーの確保、データ蓄積に要する費用負担など詳細を詰めるべき論点は多いという。  図面や出来形、品質、協議といった各種データを個々の工事を超えて蓄積できれば、AIによるサポートの精度はより高まる。平本氏は、最終的な判断は人間が担うとした上で、「人間の能力を(AIを介して)拡張していきたい」と展望を語った。  受発注者の業務スタイルも変化を迫られる。CISSAの穴久保剛副会長は、公共工事で「紙の文化が続いてきた」と指摘。電子化した書類をAIが読み込み、受発注者をサポートするようになれば大幅な省力化が見込めるとした。  将来的には、ASPの機能要件自体の見直しも視野に入る。現行は紙をそのまま電子化した情報をやりとりしているが、例えば出来形管理表ではなく、出来形データそのものをASP上で確認するような仕組みも考えられるという。  中小建設業が自社だけでAIの利用環境整備や、学習用データの蓄積に取り組むことは難しい。自治体工事にも使われるASPへのAI実装は、加速度的に進化するAIの能力を、中小建設業の生産性向上につなげる新たな契機となる。