AI時代の建設業(5) ヒューマノイドが多能工に フィジカルAIで世界をけん引

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人の作業を支援するヒューマノイドの開発も現実味を帯びてきた(画像はイメージ)。

 「将来を見据えれば、ヒューマノイド(人型ロボット)の多能工も考えていく必要もあるだろう」。先端建設技術センターが10月に開いたシンポジウムで、国土交通省の髙橋伸輔参事官はそう展望した。機械施工がどれだけ高度化しても、建設現場では必ず小規模・多工種の作業が発生する。将来的な担い手不足に対応するため、人の作業を支援するフィジカルAIが現場に登場する日が近づいている。  製造業の現場と異なり、土木工事は現場ごとに施工条件や地形が多様なため、決まったルールに沿って稼働するロボットの導入が進んでこなかった。髙橋氏はこうした標準化されていない建設現場でこそ、周辺を観測して自律的に行動できるフィジカルAIが活用できると期待を寄せる。  実用性あるフィジカルAIを実現するには、大量の学習用データが必要になる。国交省は今月下旬、建設会社やAIスタートアップ、ロボット開発企業、大学などによる官民コンソーシアムを立ち上げる。狙いの一つは、必要なデータや通信仕様、データ共通基盤などについての共通認識を持たせ、事業者が挑戦しやすい環境を整備することだ。  そもそも、建設工事の成果物となる出来形データなどは発注者に帰属する一方、施工途中のデータが受発注者のいずれに帰属するかは明確に整理されていない。国交省は9月に公表したインフラ分野のAI取り組み方針で、こうした施工データの活用・流通に向けたルールと基盤整備を位置付けた。  髙橋氏は、建設分野が他産業と異なる点として、「公共事業が占めるウエートが非常に大きいこと」を挙げ、国交省の直轄工事を積極的に実証フィールドとして活用する考えも示した。コンソーシアムで今後行う議論を踏まえた上で、国交省として直轄の現場からデータを取得することも検討。発注者として、建設分野のフィジカルAI開発を後押しする考えだ。  国交省は、フィジカルAIの活用を開拓すべき領域として「機械施工」と「人力作業支援」を位置付けている。このうち機械施工は、これまでもICT施工で取り組んできた遠隔・自動施工の延長線上にあるものだ。自動施工は直轄工事でも既に試行が始まっている。今後は、いかに中小建設業に普及させるかが主要な課題となる。  一方、人力作業支援のフィジカルAIはさらにその先の実用化に向けて開発が進む。現場内の小規模運搬や巡視、構造物の点検など、人の手で行っている無数の作業を補助・代替することを目指す。暗黙知に支えられている部分も大きく、まずはどの作業をフィジカルAIが担うべきかのニーズ把握がテーマとなりそうだ。  その延長線上には、人が担う作業を補助したり、人が入ることが困難な場所で作業するヒューマノイドの開発も想定される。小規模・多工種の作業を担える、「多能工ロボット」のような存在だ。  髙橋参事官は「フィジカルAIの開発が全世界で進んでいるが、建設分野の勝敗はまだ決していない」と強調。コンソーシアムを活用し、精度の高い現場データを蓄積することで、世界に打って出られる高度なフィジカルAIの開発を目指すとした。日本の建設業界とAI・ロボット企業による挑戦が今、始まろうとしている。 (この連載 了)