セルウィン・ハート国連事務総長特別顧問 基調講演
- 1.5℃の約束 キャンペーン
建通新聞社は、国連広報センターが呼び掛けるキャンペーン「1.5℃の約束-いますぐ動こう、気温上昇を止めるために。」に賛同します。読者の皆さまとともに「建設業界が担う役割、期待される活動」を考えていきます。
日本に期待する「率先垂範」「財政立て直し」のリーダーシップ
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▲セルウィン・ハート国連事務総長特別顧問 |
1・5度の目標を現実にし、気候危機の最悪の影響を防ぐ機会は、ほとんど失われています。私たちは既に、現在の温暖化レベルで、地球上の都市、国、大陸で前例のない異常気象を目の当たりにしています。
しかし、希望はあります。気候変動による大惨事を回避するために、誰が何をいつまでに実行すべきかについて、これほどまで明確になり、合意が形成されたことはありません。
私たちには、クリーンエネルギーへの転換を加速させる技術、ソリューション、ノウハウがあります。再生可能エネルギーと蓄電池は、かつてないほど安価で入手しやすくなっています。化石燃料のない未来は今や確実なものになっています。しかし、公正で迅速なエネルギー転換はまだ確かになっていません。
世界が日本に期待するリーダーシップは二つあります。
一つは、率先して模範を示すこと。2025年に各国が提出する予定の次期NDC(気候計画)は、各国が自国のエネルギー戦略と経済開発の優先事項を、気候変動の野望と整合させる前例のない機会です。次期NDCは、1・5度目標と整合し、経済全体と全ての温室効果ガスを対象とし、COP28の世界的なエネルギー転換目標の全てに貢献するものでなければなりません。
日本は、第7次エネルギー基本計画と新たなNDCの策定に当たり、1・5度目標と整合するNDCとエネルギー転換計画がどのようなものなのかを、世界に示す必要があります。石炭・ガスへの固執から早急に脱却し、国内的、地域的、国際的に再生可能エネルギーとその貯蔵の展開を支援しなければなりません。
二つ目として、私たちには、財政を立て直し、公正で公平なエネルギー転換を確保するためのリーダーシップが必要です。中国以外の開発途上国や新興国でのクリーンエネルギーへの投資は、2015年の水準にとどまっています。日本は、主要な二国間援助と国際開発金融機関の出資国であり、持続可能な開発目標(SDGs)と、パリ協定の達成に見合う金融の基本構造の構築に必要な大胆な改革を進めるために、これまで以上にそのリーダーシップが必要とされています。
私たちに必要なグローバルな金融システムとは、「地球の破壊を助長し続け、最も必要とする場所に手頃で十分な資金を提供できないもの」ではなく、解決策の一部となるものです。あらゆる都市、地域、産業界、金融機関、企業もまた、解決策の一部になる必要があります。この正念場において、最大限の意欲的な目標、加速、そして協力が求められます。
国連は全力を尽くします。信頼を築き、解決策を見つけ、利害関係者を招集し、世界が切実に必要としている協力を促すために、たゆまぬ努力を続けます。