新3K知ってますか(4) 報道されない災害復旧

中央
 2000年代に過熱したメディアの公共事業バッシングが、今なお建設業のイメージに影を落としている。東日本大震災を契機に防災・減災の価値が見直され、こうした報道は落ち着いたものの、災害復旧時に活躍する建設業の姿は、いまだ社会に広く認知されているとは言いがたい。建設業の具体的な仕事のイメージ、そして社会的な価値を伝えることが求められている。  「2000年ごろに建設業のネガティブなイメージが形成されたことは否定できない」。そう話すのは、建設業や公共事業のイメージを継続的に調査してきた京都大学の田中皓介助教だ。田中氏が読売、朝日、毎日、産経の主要4紙を対象に、「公共事業」と「無駄」「バラマキ」といった単語がセットになった記事件数を調べたところ、00年が報道のピークとなったという。 ■世代で変わる建設業のイメージ  その後、公共事業をバッシングする報道は減少を続けた。東日本大震災の発生が転機となったというのが田中氏の見立てだ。主要紙の記者からも、防災の意義が示されたことで、論調が変わったとの声が聞かれたという。  だが、00年代にこうした報道に触れた層には、建設業のネガティブなイメージが残っている。田中氏が21年に、公共事業に対するイメージについてアンケートを行ったところ、40歳以上ではネガティブなイメージを持つ人が多かったのに対し、39歳以下では中立に近かったという=グラフ参照。「時間の経過とともに、建設業のイメージは回復していくのではないか」と田中氏は分析する。 ■ポジティブな評価の機会を生かす  建設業界は「地域の守り手」を自任し、頻発化・激甚化する災害現場で復旧活動に携わってきた。本来であればイメージ向上に大きく貢献するはずだが、田中氏の研究では、自衛隊や警察、消防などと比べ、新聞に取り上げられる回数は皆無に近かったという。  報道されにくい理由の一つとして、田中氏は「分かりにくさ」を指摘した。自衛隊や警察は所属が明確で、制服に身を包んだ見た目からも視覚的に活動の主体がはっきりしている。一方、建設業の復旧活動は国や自治体の発注など多様で、どのような主体が参加しているのかが分りにくいのだという。結果として、ポジティブな評価を得られる機会を逃してしまっている。  災害復旧で建設業が果たす役割を広く発信するには、活動を記録し、わかりやすく伝える戦略的な広報姿勢が求められる。「視覚的な統一感も有効ではないか。災害復旧に携わる建設業者が身につけられる、統一的なマークがあってもいい」(田中氏) ■建設現場は広報の最前線  建通新聞社が行ったアンケートでは、プロ野球・日本ハムの本拠地「エスコンフィールドHOKKAIDO」の建物を見て建設業のイメージが好転したとの回答が寄せられた。建設現場や、成果物である建築・土木構造物を見てもらうことが、若い世代に関心を持ってもらう第一歩だ。  田中氏は「ある意味では、全ての建設現場は広報の最前線だ」と見る。大きな現場だけでなく、生活道路の舗装補修や住宅建築を含め、そこで目にする工事の風景や技術者、技能者の姿の積み重ねが建設業全体のイメージを左右することになる。  コロナ禍を経て、インフラを支える建設業の「エッセンシャルワーカー」としての役割は一定程度、認知された。だが、重要性が浸透したとして、そこで働きたい人が増えるとは必ずしも言えない。建通新聞社のアンケートでも、建設業の役割は認めながら、屋外作業の過酷さを忌避する声が少なからずあった。  公共工事では、熱中症対策の積算を手厚くしたり、完全週休2日を推進するといった、現場環境の改善が進む。さらなる取り組みを進めるとともに、こうした実態を戦略的に伝えることもまた、重要だ。