発注力低下(3) 減らない自治体業務 総合評価の審査事務効率化
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「価格と品質が総合的に優れた内容の契約」を目指した、総合評価落札方式の根拠となる品確法が2005年4月に施行された。施行から20年がたち、すでに全ての都道府県・政令市が総合評価を導入している(試行導入含む)。静岡県では、品確法が施行される2年前の03年度から総合評価の試行を開始しており、受発注者の事務手続きの負担軽減も図りながら運用を続けてきた。
県交通基盤部の総合評価の適用工事は、19年度に475件あったが、20年度に293件となり、前年度から38・3%減少。その後の4年間は200件台で推移している=グラフ参照。
県交通基盤部は、新型コロナウイルスの感染拡大を受け、20年度に総合評価の実施基準額をそれまでの「予定価格3000万円以上」から「同5000万円以上」へと縮小。22年度、23年度の台風被害で県内の広域で災害復旧工事も急増し、総合評価の適用工事はさらに減少した。
品確法が施行された05年度当時、806人いた静岡県の土木職員は直近5年間に730人程度となり、1割減少している。マンパワーが低下する一方で、自然災害は激甚化・頻発化し、慢性的な人手不足が進んでいる。先進的に総合評価を適用したことが、職員の負担にもなっていると見ることもできる。
さらに、県交通基盤部は25年度、「予定価格5000万円以上」としていた基準額を廃止。工事内容を踏まえて総合評価を適用するかを判断できるようにした。これまでは、5000万円未満でも技術提案を求めるべき前例のない工事があった一方、一般的な舗装工事であっても、基準額を上回れば総合評価を適用する工事もあった。「単に金額で判断するのではなく、総合評価を適用すべきものは適用し、そうでないものは除外する」。県の担当者はそう狙いを話す。
入札参加者側の提出書類や手続きを減らすことにも取り組んでいる。総合評価が始まった当初は各種書類を入札参加のたびに提出する必要があり、受発注者双方の負担となっていたが、15年度に事前審査登録制度を導入。週休2日推進工事の施工実績の有無やICT普及啓発活動の有無など、総合評価の評価項目の一部を年度当初に審査・登録しておくことで、受発注者双方の事務量を軽減している。