建設業皆保険時代(5)週休2日、酷暑対応妨げる日給月給制 月給制移行は実現するのか

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 この夏に気温35度を超える酷暑日が続いたことを受け、現場の働き方の見直しを求める声が業界内で強まっている。生産性が下がる夏季には休暇を増やし、その他の季節に労働時間を振り分けられるよう、柔軟な働き方を認めてほしい、という主張だ。ただ、日給月給制で働く技能者にとっては、夏季の収入減になる休暇の増加は簡単に受け入れられるものではない。  屋外作業が多く、働き方が天候に左右される建設業では、技能者の給与の支払いを日給月給制とする企業が依然として多い。固定給である月給制よりも、働く日数が増えると給与が増える日給月給制を望む技能者もいる。  建設産業専門団体連合会(建専連)の調査結果によると、日給月給制を採用していると回答した会員企業は全体の49・6%(2024年度時点)に上る。入社5年目までの若手を月給制とし、その後は月給制と日給月給制を本人に選択してもらう企業もいる。この企業では、結果として9割が日給月給制を選択するという。  酷暑への対応だけでなく、技能者本人の週休2日が進まない理由の一つにも、日給月給制がある。土曜日も働いている日給月給制の技能者が週休2日となれば、年間約50日分の給与が減少する。日給月給制の技能者にとって、週休2日を受け入れるのは容易ではない。企業としても、仕事の繁閑差がなくなり、安定した受注がなければ、雇用する技能者を月給制に移行させることは難しい。  ただ、日給月給制から月給制への移行を望む技能者もいるという。社会保険労務士の加藤大輔氏(レイビルド社会保険労務士事務所)は「月給制によって生活を安定させたいという若い世代が増えている」と話す。  加藤氏はまた、降雨日が休暇になることがある技能者は「休暇が確定しないと社員の有給休暇を管理できない。そのことを理由に月給制に移行したいという経営者からの相談も多い」とも話す。  建設分野で外国人を受け入れる企業には、特定技能、技能実習のいずれにも月給制の採用が義務付けられている。日給月給制で報酬が不安定になることが、技能実習生の失踪が増加した要因と見られたためだ。  この基準では、同じ企業で働く日本人が日給月給制であっても、外国人には月給制の採用を求めている。安定した報酬という視点で見ると、結果として日本人と外国人の処遇に差が出てしまっている。  全国建設業協会は10月15日に開かれた厚生労働省の審議会で、技能者の月給制移行に対する国の支援を求めた。社会保険加入対策に区切りが着いた今、働き方改革につながる月給制への移行を技能者の処遇改善の次の一手と考える業界関係者が増えている(この連載 了)。