自治体の代わりにインフラ管理 「権限代行」どこまで広がる?

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このコーナーでは、ベテランたぬき記者の「ぽんせつ先生」が、知りたがりの九官鳥「キューメット」の質問に答えます(Q=キューメット、P=ぽんせつ先生)。 Q.どこもかしこも人手が足りないみたいだね。 P.人口減少と高齢化によってあらゆる産業で人手が不足しています。出生率が上昇しない限り、この先もこうした状況が抜本的に改善することはないでしょう。今年いっぱいで、日本の生産年齢人口の中核を担ってきた団塊の世代が後期高齢者(75歳以上)になります。団塊の世代の大量退職が、さらに人手不足を引き起こす恐れもあります。 Q.建設業界も大変なんでしょ。公共工事は大丈夫なの? P.建設業は最も人手が不足している産業の一つです。高齢化も進んでいます。でもね、人手が足りないのは、施工する建設業だけじゃないんだよ。 Q.あ!役所の人たちでしょ。聞いたことあるよ。 P.よく知ってるね。地方自治体の土木部門では、この30年間で技術職員が3割減っているんだ。技術職員がまったくいない市町村も増えています。自治体の技術力が低下したため、国が代わりにインフラを管理するケースも増えています。 Q.国が代わりに?そんなことできるの? P.東日本大震災で被害を受けたインフラを復旧するため、被災直後の2011年4月に国の「権限代行」を認めるための代行法が成立しました。当時、この制度は震災からの早期復旧のためのものでしたが、その後の技術職員不足の深刻化に応じ、災害復旧だけでなく、通常のインフラ管理・整備にも適用できるよう、段階的に対象を広げています。 Q.どんなインフラに使える仕組みなの? P.自治体は、港湾、道路、河川、上下水道、砂防、空港、海岸、地すべり、急傾斜地などで権限代行を国に要請できます。今年6月に閉会した通常国会でも、道路、上下水道、空港、港湾で活用範囲を拡大する法律が成立しました。  権限代行が始まった当時は、国から地方へと権限を移す地方分権が叫ばれていました。当時の民主党政権は、国土交通省の地方整備局を廃止することを決めていたんだよ。 Q.本当に廃止されていたら権限代行なんてできなかったね。 P.そうだね。ただ、自治体ほどではないですが、国家公務員の土木系技術職員も、2年連続で採用試験の合格者数が採用予定を下回りました。国交省の技術職員には、直轄道路・河川の管理だけでなく、災害時に被災地へと派遣されるTEC-FORCEの役割もあります。国交省も権限代行を大幅に増やす余裕があるわけではありません。 もっと知りたいと思うニュースのキーワードがございましたら、hensyu@kentsu.co.jpまでお知らせください。