解説 労務費の基準(5)「お得意様価格」原資は利潤で 低い労務費、原価割れに注意

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 「労務費の基準」に基づく取引ルールが始まった今も、閑散期の稼動率を維持するための値引きや、いわゆる「お得意様価格」による安価な見積もりができなくなったわけではない。ただ、基準を著しく下回るような労務費や、総価での原価割れ契約が禁止される以上、値引きの原資には受注者の利潤相当額を充てなくてはならない。ただし、下請けに対しては適正な労務費・材料費などを支払うことが求められ、これを守らなければ法違反となる恐れがある。 ■著しく低い労務費による見積もりへの対応  一方、注文者(発注者や元請け、上位下請け)側が受注者から、適法な「お得意様価格」ではなく、労務費の基準を著しく下回るような労務費の見積書を受け取った場合はどう対応すべきか。実は、この場合は注文者に対応の義務はなく、提出された見積書を基に結んだ請負契約も有効とされる。  契約が無効にならないとは言え、原因者である受注者は改正建設業法に基づく監督処分の対象となり得る。国土交通省は、注文者が受注者に意図を確認した上で、ダンピング受注など不適正な場合は駆け込みホットラインへの通報が「期待される」としている。  逆に、受注者が提出した見積もりが、注文者に「高い」と受け止められる場合もある。注文者には、労務費を内訳明示した見積書の内容を考慮する努力義務が課されているが、見積もりが妥当でないと考えられる場合に受注者に修正を依頼することもできる。  予算に合わないと判断すれば、見積書を提出した建設業者と契約しないことも問題ない。ただし、注文者が労務費の値下げを交渉する場合は、見積書の労務単価が公共工事設計労務単価水準を下回らないようにする必要がある。 ■減額交渉と合わせた生産性向上提案も可能  注文者が受注者と価格交渉する中で、減額交渉に合わせて生産性を向上させるための提案を行うことも否定されない。この提案は、「労務単価×歩掛」で構成する労務費のうち歩掛部分の改善に関するものである必要がある。  労務単価部分を公共工事設計労務単価水準未満とすることを求めるような提案は不適正だ。無根拠・一方的な歩掛の切り下げや工期短縮の要求は、法違反の恐れがあるとされる。  適正な契約の第一歩はやはり、注文者が十分な見積もり期間を設けた上で、労務費を内訳明示した見積書の提出を受注者に求めることだ。このとき、注文者が労務単価と歩掛の明示を求めることは、労務費の適正性を確認しやすくする観点から推奨される。一方、特に専門工事業には、歩掛の開示に抵抗感のある企業も少なくなく、一律の開示までは求めていない。  とは言え、労務費の基準を著しく下回る見積もりや、総価での原価割れ契約といった法違反が疑われる際は、建設Gメンなどに労務単価と歩掛を開示し、その適正性を示すことが求められる。