解説 労務費の基準(6)公共工事に「上乗せ」措置 労務費ダンピング調査新設

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 「労務費の基準」に基づく新たな取引ルールの整備を受けて、特に公共工事には労務費確保に向けた上乗せの措置が課される。担い手確保や処遇改善に率先して取り組む役割が期待されるためだ。公共工事の入札参加者には、労務費を記載した入札金額内訳書の提出を義務化。新たに発注者が「労務費ダンピング調査」を実施することにし、記載内容に不備があれば必要に応じて落札候補者に注意喚起・警告し、建設Gメンに通報する。  改正建設業法では、民間を含めた全工事で建設業者に対し、▽労務費▽材料費▽法定福利費の事業主負担分▽建退共掛金▽安衛経費―を内訳明示した見積書を作成する努力義務を規定。公共工事を対象とした改正入札契約適正化法は、入札金額内訳書でこれらの項目を内訳明示することを義務化した。  国交省は改正法の施行に先立ち、地方自治体に内訳書の様式例を送付した。様式の見直しに時間がかかる場合は、既存様式の欄外での明示も可能とした。内訳書の内容に不備があると、提出者の入札が原則として無効とされる。  さらに、確認する工事費の範囲を労務費を含む直接工事費に絞った「労務費ダンピング調査」を新設した。低入札価格調査制度や最低制限価格制度を導入している発注機関は、失格しなかった落札候補者に労務費ダンピング調査を実施する。未導入の団体には予定価格以下の最低価格で応札した落札候補者に労務費ダンピング調査を実施するよう求めている。  労務費ダンピング調査では、落札候補者の入札金額内訳書に記載された直接工事費が官積算額の97%(中央公契連モデルの係数)を下回った場合に、ヒアリングや書面で理由を確認する。  確認に際しては、落札候補者が内訳書の作成に際して「労務費の基準」や公共工事設計労務単価を適切に踏まえているかがポイントとなる。国交省は、適用している公共工事設計労務単価が最新の値となっているか、職種・工種・地域に発注者の想定とずれがないかを確認事項として例示している。  ロットが通常の工事と比べて大規模だったり、発注者の想定と異なる新技術・工法を活用するなど、落札候補者が高い施工効率を見込んでいる場合は「合理的な回答」と見なされる。一方、下請けから徴収した見積書の内訳を確認しないまま転記した場合などは、「合理的ではない回答」とされる恐れがある。  合理的な回答が得られない場合も法的に契約が無効になることはない。ただし、発注者が原則として書面で注意喚起・警告を行い、建設Gメンに通報することとなる。  さらなる措置として、国交省の直轄土木工事では、技能者の賃金支払いや労働時間の実態調査を受注者の協力を得て試行する。技能者が実労働時間と公共工事設計労務単価に見合った賃金を受けとっているかを把握する手法を整備。適正な労務費を支払う企業が不利にならないような受注者の選定方法の検討に生かす。