解説 労務費の基準(7)どう使うコミットメント条項 適正支払い表明、選択は任意

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 「労務費の基準」に沿った見積もりや契約が行われたとしても、実際に適正な労務費や賃金が支払われなければ、技能者の処遇改善という目標は達成できない。実効性確保のため、国土交通省の中央建設業審議会は契約書のひな形「標準請負約款」を改正し、当事者間で適正な労務費・賃金支払いを表明する「コミットメント条項」を盛り込んだ。選択条項のため、実際に活用が進むかは発注者、元請けが処遇改善に関与(コミット)する姿勢にかかっている。  コミットメント条項は、公共工事と民間工事、元下契約で使用する契約書のひな形(標準約款)に、当事者が任意で使用できる条項として位置付けられた。他分野にも例がない仕組みのため、いきなり必須の条項とはせず、選択の条項として普及を促していく。  コミットメント条項には、AとBの2パターンの条文を設けた。共通の内容として、受注者が注文者(発注者、元請け、上位下請け)に対し▽直接雇用する技能者への適正な賃金支払い▽下請けへの適正な労務費支払い▽注文者の求めに応じ、支払い状況に関する書類を提出―を約束。労務費を末端の技能者にまで賃金として行き渡らせることを担保する。  条文Aではこれに加え、下請け契約でもコミットメント条項の導入を約束する。条文Bでは、下請けが同様の条文を導入するか個別に判断する。国交省としては、条文Bも準備してハードルを下げ、まずはコミットメント条項の活用を促す考えだ。  また、国交省の直轄工事でもコミットメント条項を導入したモデル工事の実施を予定。活用事例を蓄積し、地方自治体や民間発注者に水平展開する。  賃金支払いの情報開示に際しては、賃金台帳ではなく誓約書の提出を求める。労務費支払いについては、下請け契約書の写しを提出する。  民間7団体で構成する委員会が作る民間建築工事の契約書のひな形「民間(七会)連合協定工事請負契約約款」にも、条文Bに沿ったコミットメント条項が新設された。  特に民間発注者からは、自社の支払った労務費が末端の技能者に賃金として行き渡っていることの確認を求める声が根強い。コミットメント条項の導入はこうした発注者にとって、株主などへの説明責任・コンプライアンスの観点からメリットがある。受注者にとっては、自社が下請けや雇用する技能者に適正な賃金・労務費を支払う企業であるというアピールポイントに活用できそうだ。  標準約款では、コミットメントに違反した場合のペナルティーを規定していない。注文者側に損害賠償請求権が生じるようなものではないが、契約上の債務不履行には該当するため、契約解除の理由になり得る。