解説 労務費の基準(8) 適正支払いの宣言制度創設 「正直者」が報われる業界に

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 「労務費の基準」に沿って適正な労務費・賃金を支払う建設企業にとって、最も避けたいのは労務費をダンピングする企業が見過ごされ、「正直者」が競争で不利になることだろう。ただ、建設Gメンが全ての悪質な事業者を監視できるわけではない。本質的な制度の目的は良心的な企業が市場で選ばれる商慣習を形成することにある。このために、国土交通省が構築したのが「建設技能者を大切にする企業の自主宣言制度」だ。  自主宣言制度では、適正な労務費・賃金支払いに関する一定の要件を満たし、処遇改善に取り組むことを宣言した企業をオンライン上で可視化する。発注者と元請け、下請けがそれぞれ宣言でき、建設工事のサプライチェーン全体で適正支払いの機運を醸成する狙いがある。  改正建設業法が全面施行された2025年12月12日、国交省は同制度のポータルサイトで宣言企業の申請受付を開始。1月15日時点で申請企業数は386社に達した。このうち、元請けが312社と全体の8割を占め、次いで下請けが73社だった。発注者は1社となっている。  宣言企業となるには、元請け・下請け・発注者に共通の必須項目として、▽労務費・材料費等を内訳明示した見積書の作成▽下請けから提出された見積書の考慮・尊重▽宣言企業との優先取引―などが求められる。さらに、元請け・下請けのそれぞれに対し、建設キャリアアップシステム(CCUS)の利用環境整備に向けた要件が課される。  宣言企業はポータルサイトで公表され、シンボルマークを活用して自社が宣言を行っていることを対外的にアピールできる。  国交省は、「労務費の基準」の運用方針で、発注者や元請け、上位下請けに対して宣言企業との優先取引が「望まれる」と明記。受発注者間、元下間で宣言企業が選ばれやすくなる市場環境を整える。技能者が就業先を選ぶ際にも参考にしてもらい、処遇改善に前向きな企業が担い手を確保しやすくする。  経営事項審査での加点措置というインセンティブも設けた。宣言企業は、経審の「その他審査項目」(W点)で5点を加点することとしており、元請けで公共工事を受注する建設業者にとってのメリットとなる。宣言書の写しとともに、取り組み開始日以降に宣言内容を実施する誓約書が必要になる。7月1日からの施行を予定している。