解説 労務費の基準(11)賃上げの「好循環」目指す CCUSレベル別年収に目標値
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2025年3月適用の公共工事設計労務単価は12年度と比べ、全職種平均で85・8%上昇した。国土交通省は「労務費の基準」を通じてこの流れを民間工事に広げ、技能者の賃金にまで波及させようとしている。このため、目指すべき水準として「建設キャリアアップシステム(CCUS)レベル別年収」を改定。実際に賃上げが進めば、翌年度の労務単価に反映され、基準に基づく労務費も上昇する。この「好循環」の実現は、労務費をダンピングしない新たな商慣習の定着にかかっている。
労務費の基準は、公共工事設計労務単価相当の労務費確保を基本とする。実際の請負契約でこうした労務費が確保され、技能者の経験・能力に応じて賃金として支払われたときの年収水準を示すのがCCUSレベル別年収だ。
技能者が保有資格や就業履歴をCCUSに登録すると、専門工事業団体の整備した基準に基づいて4段階のレベル判定を受けることができる。
国交省は、23年度に技能者のキャリアに応じた賃金の参考として、レベル別年収を初めて公表。このときは、法的拘束力のない賃金の目安という位置付けだった。
今回、改正建設業法の全面施行に合わせてレベル別年収を改定し、目標値と標準値の二つを設定した。電気工事や橋梁など43分野、全国10ブロックに細分化されている。
目標値は各レベルの平均以上という位置付けで、「適正な賃金」としてこの水準での支払いを推奨する。標準値は各レベルの下位15%程度にあたり、これを下回る支払い状況の事業者については、注文者との請負契約で労務費ダンピングの恐れがないか重点的な確認対象にするとした。建設業法上の指導にもつながる、より重い基準としてレベル別年収が位置付けられた形だ。
公共工事設計労務単価そのものは、レベルごとに分かれてはいない。単価の水準は、おおむねレベル2~3の技能者のレベル別年収を日額換算した賃金水準と同等になる。個々の工事の請負契約では、CCUSレベルの高い技能者が施工することを理由に、注文者に対して労務費の基準より高い水準の労務費を求めることも必要となる。
2月には、26年度から適用する新たな公共工事設計労務単価が公表される。改正法が全面施行された今、この単価は従来のように公共工事の積算に使われるだけでなく、民間工事の請負契約でも支払われるべき労務費の基準の構成要素として、その役割の重みを増している。
新たな単価を踏まえた労務費が26年度に適切に支払われ、末端の技能者にまで賃金として行き渡れば、公共事業労務費調査でその実態が把握され、27年度の公共工事設計労務単価に反映される。
賃金上昇の持続的な好循環を生む制度的な枠組みは整った。この仕組みを生かせるかどうかは、建設工事のサプライチェーンを構成する発注者、元請け、専門工事業者の姿勢にかかっている。(この連載 了)
