連載②「今問われる発注の〝歪み〟~弥富市官製談合から見えた課題~」

中部

市区町村の部門別職員数の推移(国交省「地方公共団体定員管理調査結果」参考)

 前回、紹介した「落札率100%でも赤字」という案件が生まれるプロセス。受注が難しい案件を、なぜ発注者は発注し、受注者は受注するのか。そこには、地域に根差した地元建設業界ならではの構図がある。  地方自治体の公共工事には、翌年4月から通学が始まる学校、農繁期までの完成を約束した農業施設など、完成時期を延ばしづらい案件が多い。また、補助事業は年度内の完了が原則だ。後者は、国が発注時期の平準化と合わせて柔軟な対応を薦めているものの、繰り越し手続きを忌避する考えは根強い。自治体の発注担当者は、常に「(工期延伸につながる)不調・不落を発生させるわけにはいかない」というプレッシャーにさらされている。今回の事件の舞台となった弥富市も、4月1日に市制施行20周年を控えており、まちなか交流館のリニューアル工事もその一環として行われたものだった。  一方で、地元建設業の多くは、「地域のために」「地域を守る」といったスローガンを掲げている。これは単なる標語や体裁ではなく、実際に災害が発生した際には、災害協定などに基づいて出動し、地域のインフラの維持管理も担うという行動に裏打ちされた言葉だ。経営者や社員にも地域で生まれ育った人が多く、郷土への思いはひときわ強い。  こうして、「地元のために仕事を受注してくれ」という発注者側の口説き文句と、「地元のために受注しなければならない」という受注者側の義務感が生まれる。期限までに完了しなければならない「落札率100%でも赤字」の工事を、「地元のために」という言葉で罪悪感を軽減し、手っ取り早く発注していく構図だ。  ただ、これが「なれ合い」だという批判は、甘んじて受け入れるべきだろう。特に発注者側には、損を押しつけず、適正に発注する努力が求められる。前回の記事で、入札までのタイムラグに触れたが、細やかな実勢単価の反映や、工事内容の見直し、議会への説明など、発注者側ができる工夫や手段があることも事実だ。 【発注者を追い込む技術者不足】  一方で、日頃から公共工事を取材する中で、多くの発注者、特に中核市未満の市町村に、そういった柔軟な対応が難しいことも分かっている。  建設業界の担い手不足が社会問題化しているが、自治体の職員不足も深刻だからだ。統計上でも、2024年の市町村全体の職員数はピークとなる1996年より約15%減少、土木部門の技術系職員は約26%減少している。高齢化も深刻で、技術職員全体の7割以上が40~60代。そして、2000年代前半に入庁した世代の多くは「コンクリートから人へ」に象徴された社会情勢の中で、大型事業を経験していない。このような状況下で、公共事業の経験が豊かで、調達方法の改善に意欲を持つ職員を育てることは難しい。  それでも、インフラの老朽化が深刻化する中、自治体は公共事業を発注していかなければならない。大切なのは、今回の事件を単なるコンプライアンスの問題と捉えるのではなく、それぞれの自治体が公共調達システムを再点検し、解決を図る契機としていくことではないだろうか。