連載③「今問われる発注の〝歪み〟~弥富市官製談合から見えた課題~」

中部

コンプライアンス研修(提供/弥富市役所)

 談合事件で大きく損なわれるものは何か。対象が「落札率100%でも赤字」という案件であった場合、それは税金ではない。公共事業への信頼や、建設業界のイメージだ。特に現在の建設業界は、担い手不足を喫緊の課題とし、魅力ある産業として新4K(給与・休暇・希望・かっこいい)の実現を目指している。魅力ある産業であるためには、理由はどうであれ、談合を排除していくべきなのは自明の理だ。そして、同じく担い手不足に悩む自治体も、職員を守り、育てるシステムの構築が求められている。  今回の弥富市の事件がそうであったように、官製談合の大半は、予定価格や最低制限価格の漏えいが起訴理由となる。公共工事の透明性や公正さを保つためには、これらの扱いをまず検討するべきだろう。  その一手として、よく挙げられるのが予定価格の「事前公表」だ。愛知県内にも、事前公表を採用する自治体は多く、弥富市も今回の事件を受けて、より積極的に事前公表を検討する方向性を示した。  一方で、国土交通省は、自治体に対して予定価格(設計金額)の「事後公表」を要請している。その理由は、事前公表が▽適切な積算を必要とせず、積算能力・技術力を損なわせる▽目安となり、談合を誘発する恐れがある▽最低制限価格を類推させ、入札が形骸化する―など。2000年代前半の過当競争時代を振り返れば納得できる面もあるが、国と自治体の立場の違いも考えるべきだ。  幅広い地域から人材が集まる国に対して、市町村は職員に地元出身者が多く、ほとんどがその地域に住んでいる。そして、それは地元建設業の経営者や社員も同様だ。必然的に疑われる機会が増える以上、職員を疑惑から守るシステムは不可欠だろう。予定価格などの重要情報をオープンなものとしながら、下限をブラックボックス化するなど、積算能力や競争性を維持する仕組みづくりが必要だ。  その上で、発注者側には、意識や専門性、知識を向上させる取り組みが求められる。今回の事件を受けて、弥富市は3月6日に入札・契約事務に関わるコンプライアンス研修を開催、管理職員や入札・契約事務に携わる係長級職員ら51人が官製談合防止策を学んだ。こうしたコンプライアンス意識の醸成に加え、多くの自治体には、多様な部署を異動する中でも専門性や知識を蓄積できるキャリアルートの構築が必要だ。さらに、事業量に比して職員数が確保できないならば、包括的民間委託や広域連携(群マネ)などの導入も模索していくべきだろう。  これらの環境整備を進めながら、将来的には受発注者間の適切な交流、相互理解の進展を望みたい。「落札率100%でも赤字」という案件を取材する中で感じたのは、発注者の「それでも取れるだろう」という意識と、受注者の「あいつらは現場(現状)を分かっていない」という思い。互いの置かれた状況への理解不足、すれ違いが、不透明で不十分な対応を生んでいる。  高齢化社会の進展で逼迫(ひっぱく)する財政、深刻なインフラの老朽化―。自治体には喫緊の課題が山積している。本当の意味で互いが「地元のために」働けるよう、新しい公共工事の発注体制と、受発注者の協力体制が構築されることを期待したい。(完)