縮小する公共投資(3) 相次ぐ庁舎建設計画見直し 公共建築は「オーバースペック」

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コスト増で見直しや延期を迫られる新庁舎整備計画が増えている(上:小金井市庁舎、右下:熊本市庁舎、左下:さいたま市庁舎)

 全国各地の地方自治体が、既存施設の老朽化に対応するための新庁舎整備の実現に苦慮している。その主な要因が、物価や人件費の上昇に伴う事業費の大幅な増額だ。市民からは事業費の妥当性や財政負担への懸念の声も寄せられる。建設プロジェクトのマネジメントを手掛けるインデックス(東京都港区)の植村公一社長は、公共工事の実情を踏まえて「公共発注の在り方を再検討すべきだ」と指摘する。  熊本市が計画する新庁舎整備は、基本構想で想定した工事費が、構想策定から2年間で2倍以上となる885億円にまで増加した。市議会や市民からは、市の財政面への影響を不安視する声が多く寄せられている。熊本市は今後、有識者会議を設置し、工事費の再検証や、コスト縮減につながる工事手法の検討を進める方針だ。  茨木県鉾田市では、物価高騰による事業費の増加などを受けて、当初の新庁舎整備計画を中断する事態となった。事業費の縮減や施設規模の縮小を図るとし、3月から再検討をスタートさせた。当初計画からは、複数年単位で事業スケジュールがずれ込むことが見込まれる。  東京都小金井市では新庁舎建設の施工者選定が難航している。2025年1月と4月の2回にわたって入札を実施したものの、いずれも不調。同市は、「予定価格と実勢価格の乖離(かいり)」が不調の要因の一つだとみている。施工者の受注体制が整わないことも背景にあるという。市は26年度中の着工を見送り、市場動向を見定めた上で工事費を見直し、改めて事業者の選定に臨むとしている。  この他にも、東京都江戸川区やさいたま市の新庁舎整備でも事業費の増額が見込まれるなど、事業費が大きくなる新庁舎整備で物価高騰の影響が顕著に表れている。全国に広がるこの課題に、自治体はどう対応するべきなのか。  「公共建築物は、必要とされる機能よりもオーバースペック」と、植村氏は語る。空調や電気、設備などに対して細かく指定している水準が高く、必要以上の事業費となっていると指摘する。要求する機能を提示し、具体的な手法は受注者に委ねる「性能発注」を取り入れれば、工事費を抑えられるとの考えを示す。  また、「建設して終わりではなく、建設後の維持管理・運営も含めてコストを考えるべきだ」とも語る。ただ、維持管理・運営段階のコストを想定できる人材を、発注者側で確保するのは難しい。プロジェクトマネジメント(PM)方式に代表されるこうした役割は、「地場のコンサルタント企業が担い、発注者に寄り添える体制の構築が望ましい」とし、地域建設業が存続するための一つの道筋も示す。  性能発注やPM方式、PFI手法の導入を視野に「重要なことは事業の目的を達成する発注手法を考えること」だと主張する。予算の制約の中で公共事業を適切に進めるために、企画段階で必要な機能や性能を明確化し、適切な発注手法を選択することが求められている。