建設業界のM&Aとは【第4回】M&A成立までの流れ③ 最終段階
M&A成立までの流れは「検討・準備段階」「打診・交渉段階」「最終段階」の三つに分かれる。ここでは前回に続き最終段階の流れを確認する。
①デューデリジェンス(DD)を受ける
②最終条件交渉
③最終契約締結
④クロージング
⑤統合プロセス実施
①デューデリジェンス(DD)を受ける
デューデリジェンス(DD)とは、譲り受け企業による譲渡企業の詳細な調査であり、M&A実行の最終判断材料である。主に財務・税務・労務・ビジネス面を調査し、簿外債務や社内外トラブルなどのリスク評価を行う。通常、譲り受け企業が専門家に依頼して調査を実施する。譲渡企業は迅速かつ誠実に協力する必要がある。大きなリスクが発覚した場合、M&Aが白紙撤回される可能性もあるが、シナジー効果が期待以上であれば実行に至ることもある。
②最終条件交渉
デューデリジェンスの結果を踏まえ、最終契約に向けた交渉を行う。基本合意書を基に、取引金額、譲渡範囲、M&Aの手法、役員・従業員の処遇などを調整する。合わせて、契約締結日、契約調印会場、従業員・対外関係者に対してのM&A開示日を決めることが一般的である。
③最終契約締結
双方のM&Aに対する合意内容を盛り込んだ最終契約書を作成し、締結する。最終契約書は法的拘束力を持つ最重要文書であり、締結後の変更は困難である。そのため、詳細に検討することが肝要である。この内容に違反し損害を生じさせた場合は損害賠償請求の対象となる。
最終契約書の主な記載事項は、「取引対象」「取引価格」「クロージングの前提条件」「表明保証」「誓約事項」「補償と解除」などである。契約内容に不備のないようM&A専門家のサポートを受けながら草案を作成し、最終的に弁護士に確認を依頼するのがよい。
④クロージング
最終契約書に基づき、資産の引き渡しや譲渡代金の支払いを完了する段階をクロージングという。M&A成約式では契約書の最終確認と調印が行われ、譲渡企業の株主に対して譲渡代金の支払いが完了した時点で、手続き上のM&Aは完了となる。
⑤統合プロセス実施(PMI)
M&Aの手続きが完了後、想定していたシナジー効果を得るためには、統合プロセス(PMI: Post Merger Integration)が不可欠である。企業文化・経営資源・制度面・業務面などの統合を行う。第三者的立場でM&A専門家が統合計画の策定から支援もできる場合があるため、活用するとよい。M&Aの最終段階は、企業の将来を左右する重要なプロセスだ。各段階で専門家の助言を得ながら、慎重かつ戦略的に進めることが、成功のカギとなる。