建滴 時間外労働の削減 課題解決への努力続けたい

  建設業に罰則付き時間外労働の上限規制が適用され、早や一年を迎えようとしている。時間外労働の削減は、「地域の守り手」であるべき建設業が今後も担い手を確保し、持続可能な産業として発展していく上で、最も重要な課題の一つであることは言うまでもない。

 昨年4月の施行開始まで、建設業には5年間の猶予期間があった。本来はこの間に受発注者の双方がさまざまな課題を洗い出して対策を練り、解決した上で適用時期を迎えるべきだった。しかし、昨年を振り返ると、受発注者ともに手探りで過ごしたというのが実情だろう。時間外労働の削減について、どのように行動し、どのような課題が発生し、どう対処してきたか。それぞれの立場でしっかり実態を検証した上で25年度を迎えるべきではないだろうか。
 建設業技術者センターが昨年12月にまとめた調査によると、時間外労働削減のための具体的な方策として「書類作成ソフト」「電子小黒板システム」「データのクラウド化」といった、企業によるデジタル化の取り組みが一定の効果をもたらしたという。一方、技術者個人の働き方に着目すると、特定の技術者に業務が集中し、仕事量の偏りを解消することが、これからの課題として浮き彫りになったようだ。
 技術者の時間外労働が発生する主な要因には、設計変更や協議資料の作成が挙げられる。公共事業の予算執行には時間的な制約があるために、設計図書が不十分なまま工事が発注されてしまい、現地との整合が取れずに変更が生じることも度々だ。また、関係機関との協議が終わらないままに工事が発注され、その後の資料づくりを受注者が担うこともあると聞く。
 さらに、年度ごとに予算を執行する公共事業以外でも、商業施設やマンションといった民間事業では開設や入居の時期をあらかじめ決めておく必要があることから、工期を変更しにくいという事情もある。こうした余裕のない工期の設定が時間外労働削減の障壁になっているといった声は小さくない。
 建設業は他産業に比べて賃金が低く、就労時間は長いと指摘される。現状のままでは担い手の確保がますます難しくなるばかりだ。どの課題もすぐに解決できるものではないが、民間も含めた発注者と受注者の双方が「時間外労働の削減、待ったなし」の危機感を共有しながら歩調を合わせて行動し、課題解決への道筋をしっかりと付ける必要がある。