建滴 議論すべきは請負関係の在り方

  政府は今国会に提出する下請法改正案で、法律上の用語である「下請け」を「中小受託事業者」に変更するとしている。受発注者の上下関係を連想させるため、というのがその理由だ。下請法は製造業をはじめ、建設業以外の産業を対象としたものだが、建設業においても「下請け」という言葉を、果たして見直すべきなのだろうか。

 下請法は、物品の製造や設計、役務などの委託を対象に、親事業者による下請けへの優越的地位の濫用を取り締まる法律。同法に基づく下請けは資本金3億円以下に限られ、親事業者の方が規模の大きな取引を規制する。取引の当事者間に力の差があることを前提とした法律と言える。
 一方、建設業法では、建設業者が工事の一部を請け負わせる相手方を下請負人と規定しており、企業規模は問わない。とは言え、元請けと下請けの間に力の差があり、下請けに不利で、片務的な契約があるということは、これまでも繰り返し指摘されてきた。
 そうした実態があるからこそ、昨年の建設業法改正では、資機材価格の高騰分を適切に上位下請けや元請け、発注者に転嫁するルールが規定された。技能者の賃金にしわ寄せが生じないよう、「労務費の基準」を定めることも盛り込まれた。従来の商慣行を見直し、重層下請け構造によって成り立つ建設産業を健全化しようとするものだ。
 記録的な物価上昇や深刻化する人手不足を背景に、建設業の元下関係には変化も見られる。電気・空調・設備のサブコンは、都市部の大規模再開発による繁忙を背景として選別受注に動くなど、元請けとの力関係が逆転する現象も起きている。
 国交省の中央建設業審議会の基本問題小委員会は23年に、建設業の重層下請け構造に起因する非効率、技能者への不利益といった課題を指摘していた。これを受け、国交省は今後、実態調査を行う。「下請け」の用語の適正性を考えることも重要だが、今後のあるべき請負関係の姿を考えることこそが、取引の場で苦境にある建設業の助けになるはずだ。
 建設業法と入契法、品確法を担い手3法として一体改正するこれまでの流れに沿えば、5年後にまた建設業法が改正のタイミングを迎える。あるべき請負関係を熟議した上で、よりふさわしい用語があれば、そのときにこそ「下請け」の用語を見直すべきではないだろうか。