建滴 阪神・淡路大震災から30年 「何が起きても動けるように」

  淡路島北部を震源とするマグニチュード7・3、最大震度7の兵庫県南部地震が発生し、阪神・淡路大震災が引き起こされた。あれから今年で30年が経過し、各地で関連のイベントが開かれている。改めて当時を振り返り、震災を知らない世代、震災を経験していない人たちに尊い教訓を語り継いでいこうという機運が盛り上がっている。

 国土交通省主催の阪神・淡路大震災30年シンポジウムで基調講演を行った関西大学の奥村与志弘教授は、震災当時、転倒を防ぐためにタンスなどの家具・家電を固定している割合が10%に満たなかったとし、「大規模地震などを機に徐々に固定率は上がり、東日本大震災後は40%まで達したが、2016年に起きた熊本地震以降は、ともすれば固定率は下がっている」と指摘。「(固定率は)多分これ以上は上がらないだろう。これからは、どこかで何があっても動かない(対策を取らない)人にどうアプローチするかを考えなければならない」と強調していた。
 〝何があっても動かない人たち〟とは一部の国民を指してのことだが、遅々として復旧・復興が進まない能登半島地震の被災地を見ると、地震に対する事前の備えが十分でないのは明らかだ。
 国は、30年までに耐震性が不十分な住宅、25年までに耐震性が不十分な耐震診断義務付け対象建築物を「おおむね解消」することを目標に掲げ、所有者による耐震化を支援し、促している。1981年の新耐震基準から40年以上が経過し、おおむねの住宅が新耐震基準のものに置き換わる時期に差し掛かっているが、耐震化率の進捗は足踏みしているように見える。要因の一つに高齢者世帯の住宅耐震化の遅れが挙げられる。高齢者にとって住み慣れた住宅の建て替えや耐震補強は物心両面のサポートが必要だ。
 一つの方策として国土交通省は新たに、住宅金融支援機構のリバースモーゲージ型住宅ローンに伴う月々の利子の支払いの一部または全額を補助し、高齢者の負担を軽減する支援策の検討を進めている。
 今年の「阪神淡路大震災1・17のつどい」の際、灯籠を並べてつくる文字は「よりそう」だった。30年という時を経て復旧・復興を成し遂げた当時の被災者や行政の思いが込められた言葉を具現化するには、思い切った資金や人の投入が必要だ。“何かに備えて準備し、何かあったらすぐ動く”国や行政、そして国民でありたい