建滴 マンション大規模修繕 25年を市場適正化の節目に
公正取引委員会が3月、マンションの大規模修繕工事に関わる談合の疑いで、20社を超える施工会社へ立ち入り検査に入った。関連して話を聞いた設計コンサルタントや管理会社を含めると、調査対象は30者を超える。この調査は、長年問題視されてきた大規模修繕市場の転換点になるかもしれない。
マンションの大規模修繕工事を巡ってはこれまでも、2016年に不適切コンサルタント問題、20年代に入って管理会社によるバックマージンの問題などが指摘されてきた。それ以前にも、理事長の収賄問題などが、散発的に発生している。
国交省は、不適切コンサルタントの問題に対し、17年に管理組合団体などに通知を発出。18年と23年には実態調査を行い、適正な契約を支援する指標を示した。また、管理会社を含む第三者管理などについては、24年に外部管理者方式のガイドラインをまとめている。
それでも不適切事案の排除に至らなかった背景には、民民契約であることに加え、不正のスキームの変化がある。特にその主導者は、管理組合の理事長と施工会社から、設計事務所、管理会社などへと変遷してきた。今回の立ち入りでは、施工会社にとどまらず、こうした不正を主導する側や、そのスキームにもメスが入るのだろうか。
さらに、大規模修繕に関わる不正の要因に目を向ければ、その根底にあるのは、管理組合を構成する各世帯の〝無関心〟だ。住民が管理組合の運営を面倒だと感じ、他人任せにすることが不正を生む温床となっている。
そして、その無関心は〝悪貨が良貨を駆逐する〟市場を生む。施工会社にも設計事務所にも、真摯(しんし)に取り組む企業や人は存在するが、不正が横行すれば、真面目な人や企業ほど苦境に立たされてしまうのが現状だ。
発生から2カ月が経過した埼玉県八潮市の道路陥没は、多くの人が身近な問題と感じ、深刻に受け止めているという点で、笹子トンネル天井板崩落事故以来のインフラメンテナンスの節目になりつつある。適切な仕事を求める文化や、適正な市場は、多くの人がそれに関心を持ち、その仕事の価値を認めることでつくられ、維持される。今回の立ち入り調査が同様に、多くのマンション住民が真剣に大規模修繕を考える契機となることを期待したい。