建滴 借入金利の上昇

 金融機関からの借入金利の上昇が、地域建設業の経営リスクになりつつある。北海道建設業保証、東日本建設業保証、西日本建設業保証の3社が1~3月に行った調査で、短期借入金利が「上昇」したと回答した建設業者は「下降」を大きく上回った。金利上昇は返済の負担が増すだけでなく、工事発注者である民間企業の設備投資を冷え込ませる恐れもある。「金利のある世界」への適応は急務だ。
 借入金利の上昇に伴う返済負担の増大は、大企業よりも相対的に資金余力に乏しい中小企業に大きく影響する。特に、建設業は工事に着手してから入金までの期間が長く、下請けや材料費の支払い負担が他産業と比べて重くなりやすい。
 すでに不安の声も聞かれ始めている。帝国データバンクの調べでは、借入金利の上昇について「マイナスの影響がある」と回答した建設業は56・1%を占めた。
 長く続いた低金利の環境では運転資金の調達も容易だったが、金利上昇により、金融機関からの借り入れのハードルは高くなる。人手不足を背景とした賃上げ圧力と、長引く資機材価格の高騰も経営体力を削る。
 帝国データバンクの担当者はさらなる金利上昇について「急激な事業環境の悪化にはならないが、倒産のリスクは高まる」との見方を示した。
 財務体質の改善には、利幅の大きな工事の選別受注や、労務費・資機材価格の転嫁交渉といった取り組みが欠かせない。価格転嫁の円滑化や、労務費へのしわ寄せ防止の仕組みが盛り込まれた改正建設業法も有効なツールとなるはずだ。
 とは言え、金利上昇を背景に民間設備投資そのものが低調になれば、受注者である建設業の打つ手は限られる。帝国データバンクには「金利の上昇分以上の景気の拡大策を早急に講じてほしい」との建設業の声が寄せられた。経済全体を冷え込ませないため、政府は打開策を打ち出すべきだ。
 地方では公共工事のウエートが大きい。地方自治体は、改正品確法を踏まえたスライド条項の運用をはじめとした発注者の責務を果たし、厳しい環境に置かれた建設業が適正な利益を得られるよう、環境整備に取り組まなくてはならない。
 この10年にわたって続いた低金利の時代は終わった。金利上昇に伴い、金融機関による返済能力の審査も厳しくなる。「金利のある世界」に適応するため、建設業には利益率を高め、次代の担い手を確保して企業存続の道筋を描くことが求められている。