物価高騰と公共事業費 価格転嫁、まずは予算確保

 全国の地方自治体の入札不調・不落の発生率が低下している。国土交通省の調べによると、2023年度の発生率は、都道府県が6・2%、政令市が9・4%、市区町村が7・2%といずれも前年度を下回った。5年前と比べてそれぞれ1~3ポイント低下した。
 入札不調・不落の発生率は、東日本大震災の発生後、まず被災地で急激に高まり、その後、全国的に上昇した。13年度の国交省の直轄工事では17・4%まで上昇。国交省は、入札要件の緩和に加え、実勢価格との乖離(かいり)を解消する、入札不調・不落の防止対策を講じた。
 その後も災害が発生した地域や大型の公共建築工事などで入札不調・不落は頻繁に発生しているが、そのたびに新たな対策が講じられ、発注者側にも対策のノウハウが蓄積されつつある。
 国交省の調べによると、受注者が資材や労働者を確保しやすくなる柔軟な工期を設定できる「余裕期間制度」は、全ての都道府県・政令市が導入。現場代理人が複数の現場を兼務できるようになる常駐義務の緩和も、都道府県・政令市では土木83・4%、建築76・1%に導入されている。
 人手不足が年々深刻化する今の建設市場においても、公共工事の入札不調・不落は減少傾向にある。こうした対策が直轄工事だけでなく、自治体の発注工事にも浸透し、入札不調・不落の減少につながったというのが、国交省の見方だ。
 ただ一方で、ここ数年の物価高騰が公共工事に与えた影響を考えると、必ずしも発注者側の対策だけが減少要因ではない、と考えてしまう。
 10年前の15年度と比べた物価上昇率はおよそ3割、公共工事設計労務単価は13年度と比べ8割上昇しているが、この間の公共事業予算の規模は大きく変動していない。直轄工事の契約件数だけでみても、物価の上昇局面にあったこの5年で契約件数が2割減少しており、「実質事業量」の減少を懸念する声が業界内に強まっている。
 契約後の設計変更によって当初契約時の予算が不足し、工事の打ち切りや工事数量の減少といった事態も起きている。
 入札不調・不落の減少要因が、もし実質事業量の減少にあるとすれば、その先に起きるのは競争の激化と利益率低下だ。価格上昇分は、個別の工事だけでなく、予算にも確実に転嫁しなければ、建設産業の持続性を高め、公共工事の円滑な施工を確保することはできない。