インフラ分野の生産性向上 建設業界こそAI導入を

 政府は、昨年末に決定した初の人工知能基本計画を、早くも今夏に改定しようとしている。AIが単なる業務支援ツールから「考える力」を備えた業務基盤や、ロボットなど「フィジカルAI」へと脱皮しつつあることを受けた対応だ。建設業界は、加速度的に進化するAIの能力を産業の活力としてどのように取り込めばよいのだろうか。
 東京商工会議所が東京23区内の中小企業を対象に行ったアンケートの結果を見ると、建設業で生成AIを「使用していない」(把握していない)との回答は26・2%で、全業種中で最多だった。活用している企業も個人レベルが大半で、組織的に取り組む例は少ない。建設業界の大半を占める中小建設業のAI活用は、他産業の中小企業と比べても遅れが見られる。
 建設業にAI活用がなじまないわけではない。大手ゼネコンの事例を見ると、文書・議事録の要約や社内データ分析などのバックオフィス業務だけでなく、施工管理や品質管理をはじめとした現場業務においてもAI活用が生産性向上などの成果を上げている。
 中小建設業でAI活用が進まない背景には、導入をリードする人材の不足や、社内での導入ルール整備が追いついていないためだと考えられる。
 とはいえ、人口減少による将来的な担い手不足を補うAI活用は必須だ。個人レベルでの活用に終始し、企業としての体制整備が後手に回れば、生産性向上の機会を逸することになりかねない。
 国土交通省はインフラ管理者・公共工事の発注者として、インフラ分野のAI実装方針を9月までにまとめる。設計や積算、施工、検査、維持管理にまでAI活用を徹底する考えだ。
 方針案では、ドローンが現場を監視し、ロボットが施工し、AIが施工管理をサポートする未来像を示した。2026年度には直轄工事での現場実証も予定している。公共工事の発注者である国交省が率先してAIを活用することで、否応なしに受注者である建設業界の業務プロセスそのものの変革を促す。
 人工知能基本計画の改定案には、特定分野に特化したバーティカルAIと、現実空間で力を発揮するフィジカルAIの実装を推進すべきとし、主要な活用対象にインフラ分野を位置付けられた。裾野の広い建設産業が積極的にAIを導入し、多様な現場ニーズを提供することが、AIのさらなる進化と産業全体の生産性向上の起爆剤となるはずだ。