建滴

政府は11月29日、一般会計の歳出額を13・9兆円とする2024年度補正予算案を閣議決定した。石破政権が初めて編成した補正予算は、前年度を上回る大型補正となった。公共事業費も前年度を上回る規模だ。
 政府は28日に召集した臨時国会で、会期末の21日までにこの補正予算案を成立させる。その一方で、25年度当初予算案も年内に閣議決定し、年明けの通常国会で3月末までの成立を目指す。
 補正予算案には、国土強靱(きょうじん)の5か年加速化対策の最終年度分に加え、能登半島地震の被害を教訓として上下水道の耐震化や道路盛土の補強などの対策を全国で進める「緊急防災枠」を別枠で設けた。
 政府全体の公共事業費の大半を占める国土交通省分の補正予算額は8・3%増、次いで予算額が大きい農林水産省分は9・0%増となり、2省の合計額だけで2・3兆円を超え、前年度の補正予算額を上回った。過去10年で見ても、新型コロナウイルスの感染拡大を受けて補正予算を3回編成した2020年度に次ぐ規模となった。
 しかし、実質的な事業量は確保できているのだろうか。国土交通省がまとめている建設工事費デフレーター(建設総合)は、基準年の15年度から見た上昇率が28・9%となった(8月時点)。直近の1年間で見ても、上昇率は5ポイント以上だ。
 全国建設業協会(全建、今井雅則会長)は、11月に中野洋昌国交相に提出した要望書で、公共事業費が横ばいで推移する中、資機材価格の高騰や人件費上昇の影響により、「地域建設業は実質事業量の減少に苦しんでいる」と訴えた。
 物価が上昇局面にある今、物価上昇を上回る予算が確保されなければ、予算が増額したことにはならず、むしろ事業量は減少する。本来加速すべきはずの国土強靱化の停滞も招きかねない。
 補正予算に続き、25年度当初予算案の編成作業も年末の決着を目指して本格化する。当初予算に計上する公共事業費は、第2次安倍内閣の発足後、「安定的・持続的」の掛け声の下、ほぼ同額が確保されるようになった。政府のこの方針は建設業に安定経営をもたらしたが、物価高騰の局面までは想定されていない。
 国土強靱化や社会の生産性を高めるインフラ整備のペースを緩めないためにも、物価上昇を踏まえた当初予算を増額し、実質事業量を確保しなくてはならない。