建滴 少数与党の政権運営 政治停滞許されない

11日召集の特別国会で石破茂氏が第103代首相に選出され、第2次石破内閣が発足した。先の衆院選で自民、公明両党は過半数を割り込み少数与党となった。自公政権は今後、野党と政策ごとに協議しながら経済対策や税制改正を進めることになるが、実行の裏付けとなる2024年度補正予算案、25年度当初予算案をはじめ、重要な政策を停滞させることなく進めてもらいたい。
 国土強靱(きょうじん)化への取り組みも同様だ。13年に議員立法により制定された国土強靱化基本法は、公布・施行から10年を迎えた23年に改正され、新たに「国土強靱化実施中期計画」が法定化された。政府はこれまで防災・減災、国土強靱化のための3か年緊急対策、続いて5か年加速化対策を間断なく実行してきた。
 インフラは社会経済・生活を支える基盤そのものだ。切迫する巨大地震への備えなど課題は山積みである。改正法では5か年加速化対策の後、実施中期計画を切れ目なく策定することになっている。先行きを見通しにくい政治情勢だが、自公政権は災害に強い国土づくりを強力に推進する必要がある。
 災害対策とともに高度経済成長期以降に整備されたインフラの老朽化対策も待ったなしだ。2040年には道路橋の約75%、トンネルの約53%が建設後50年以上になるが、メンテナンスを支えるはずの担い手が圧倒的に足りない。
 国土交通省によると、市町村の土木職員数は05年度の10・5万人から23年度には9万人へと約14%減った。この減少傾向は、市町村全体の職員数の減少割合よりも大きく、技術系職員の数が5人以下という市町村が全体の約5割に上る。建設業就業者数はピーク時から3割減とさらに減少している。就業者の高齢化が進み、次世代への技術承継も大きな課題だ。建設現場の省人化、生産性向上を加速させ、老朽化した大量のインフラへの対応を急がねばならない。
 とは言え、国民の生活と安全・安心を守るのは、いつの時代も人である。インフラに従事する一人一人が誇りと希望を胸に、社会に対する役割と使命を果たせるよう、働く環境を整えることが求められる。建設業の持続可能性が危ぶまれる今、政治の停滞は許されない。各党には政治空白を生じさせることなく、建設的な議論を深めてほしい。国土強靱化基本法の改正に続き、担い手3法の改正を機に、災害に強い国土づくり、働き方改革に資する政策をしっかり進めてもらいたい。