建滴 石破政権が発足 強靱化に中長期の見通しを

石破茂首相による新政権が10月1日に発足した。同日に内閣が決定した政策の基本方針は、柱の一つに「国民を守る」を据え、「防災・減災、国土強靱(きょうじん)化の取り組みを加速する」と打ち出した。前政権からの国土強靱化の取り組みを踏襲する姿勢であり、歓迎したい。
 1日の就任会見で石破首相は、巨大台風や線状降水帯、地震災害といった災害の脅威が高まっていることに触れ、「国民の不安に正面から向き合うため、防災庁を設置、国民保護体制の実効性確保に取り組む」との考えを示した。2026年度の発足を目指すという防災庁は、災害時に司令塔機能を担う内閣府防災の強化が出発点とされる。
 平時の防災計画の立案、災害時の関係機関連携や復旧・復興支援といった施策が重要なのは当然だ。同時に強調したいのは、道路、河川をはじめとしたインフラの整備・維持管理による事前防災が、被害を低減するために欠かせないという視点だ。そのためには、国土強靱化の取り組みを中長期的に進める必要がある。
 昨年改正された国土強靱化基本法により、「5か年加速化対策」以降の強靱化事業の規模と期間を示す実施中期計画の策定が法律に位置付けられた。9月には国土強靱化推進会議で策定に向けた議論を開始したが、計画がいつまとまるかは明らかになっていない。
 新たに国土強靱化担当相に就いた坂井学氏も、実施中期計画について検討を急ぐとした一方、「一定の時間が必要になる」と述べるにとどめた。石破政権には、検討作業を最大限加速化してほしい。
 国土強靱化事業を担うのは、全国の地域建設業だ。中小規模の事業者も多く、人材や設備への投資は一朝一夕にできるものではない。実施中期計画を早期に示すことは、建設業者に中長期の経営の見通しを示し、ひいては国土強靱化を円滑に進めるためにも大きな意味を持つ。
 石破首相は会見時、地震と大雨に続けざまに襲われた能登半島の復旧・復興に注力すると強調した。能登半島では、半島部の地形特性が被害を拡大し、暮らしの基盤が揺らいだことで、もともと深刻だった人口流出が加速した側面がある。実施中期計画の検討に当たっては、こうした地方の課題にも目を向け、対策を万全なものとすべきだろう。安全・安心な地方を造ることは、首相の持論である「地方創生」の土台にもなるはずだ。