いま考える 建設業の働き方(5)変化する若年層の価値観 労基法「柔軟な働き方の土台」 

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 働き方に対する価値観は変わりつつある。建通新聞社のアンケートに回答した学生は、就職先に求める条件として、休みの取りやすさ、残業の少なさ、心身の健康に配慮した職場環境を挙げていた。建設業が若い世代に選ばれる産業になるためには何が必要なのだろうか。労働法を専門とし、労働政策審議会の分科会委員も務める成蹊大学法学部の原昌登教授=写真=は、「休日や労働時間といった基本的な労働環境の整備が出発点となる」と指摘する。  原教授は、ここ2、3年で学生が「年間休日」という言葉を自然に使うようになったと話す。求人情報を見る際、休日の日数を比較する学生が増えているという。若い世代はワークライフバランスを重視し、自分のやりたい職種だけに固執せず、企業の安定性や仕事と生活のバランスにも目を向けている。  若い世代の価値観の変化を踏まえ、建設業は働き方をどのように変えるべきなのだろうか。原教授は「労働基準法(労基法)に沿った働き方の徹底が重要だ」と強調する。労基法の根幹にあるのは、労働者の生活と権利の保護だ。価値観が変化しても「労基法に沿った労働環境が、さまざまな価値観を持つ人材の確保や、柔軟な働き方を考える土台になる」という。  一方で、労基法は戦後すぐに制定され、社会の変化に応じて改正を重ねる中で複雑な制度となった。さらに建設業は、労働時間が天候に左右されやすく、重層下請構造も根付いている。こうした建設業特有の課題も相まって、「特に末端の下請けとなる中小零細の事業者では、労基法の順守や労務管理が不十分になってしまうのではないか」と分析している。  1日8時間、週40時間という労働時間を管理し、時間外労働に対して割増賃金を支払うことは、若者が安心して働き続けるための最低限の条件であり、労働環境の改善と産業の持続性につながるとみている。要件緩和が検討されている変形労働時間制についても、「残業代が支払われない仕組みになってしまえば本末転倒だ」と慎重な議論の必要性を訴えた。  建設業の重層下請構造については、労務管理だけでなく、ハラスメントや安全衛生にも影響するとの考えも示した。同じ会社内であれば、パワハラや長時間労働への管理責任は比較的明確だが、2次、3次、4次下請けと階層が深くなるにつれて、責任の所在が曖昧になる。元請けは現場全体の安全管理に対する責任を負っているが、「元請けが下請けの労働環境にも、もっと目を配る必要性が高まっているのではないか」と話す。  労働時間や休日の確保だけでなく、若い世代が将来像を描きやすくすることも重要だ。中小企業では、大企業に比べると、どのように技能を身に付け、収入を上げ、職業人生を歩んでいくのか、働き手にとって見えにくい。  原教授は「将来の姿が見えない企業には人が集まらない」とした上で、能力評価制度とキャリアパスを示すことで、「働きたいと考える若い世代は増えるのではないか」と話す。建設キャリアアップシステム(CCUS)など、技能への評価を、賃金や処遇に反映する仕組みの知名度を高め、入職後の人材育成や技能承継、現場の生産性向上につなげるべきだとした。  建通新聞社のアンケートでは、建設業で「ぜひ働きたい」と回答した割合は7・0%にとどまった。ただ、「条件があえば働きたい」「興味はあるが働くイメージはない」との回答は30・0%を占めた。建設業に関心を持つ若い層は確実にいる。こうした若い世代をどのように引き込むか。建設業が担い手を確保するには、法令順守を土台に、若者が安心して働き続けられる労働環境と、将来を見通せるキャリアの道筋を示せるかが問われている。(この連載 おわり)