「いま考える 建設業の働き方」(4)"OJT頼み"の人材育成脱却 勤務時間内の能力開発求める声

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東亜グラウト工業のマネジメント研修(提供 東亜グラウト工業)

 若手を指導する人材がいない、育成する時間もない―。厚生労働省が2024年度に行った能力開発調査からは、企業のそんな悩みが浮き彫りになった。建設業界では人手不足によって人材育成の余裕が奪われ、さらなる人手不足に陥る悪循環も懸念される。計画的な人材育成の体制整備は、企業の存続に関わる重大な課題だ。  これから社会に出る若者は、企業にどのような育成体制を求めているのか。建通新聞社が18~25歳の学生に実施したアンケートでは、スキルアップや資格取得のための学習について「勤務時間内に教育カリキュラムとして組み込んでほしい」との回答が最多の34・0%を占めた=グラフ。  「仕事を早めに切り上げ、好きな場所で自習したい」は25・3%、「現場で先輩の動きを見て、実践の中で覚えたい」は16・0%にとどまった。アンケートに回答した若い世代は、本人の自主性に任せた自己研さんや、建設業界で一般的なOJTではなく、会社主導の体系的な人材育成を求めている。  OJTに座学や体験型の実習といったOFF-JTを組み合わせ、体系的な育成体制を整備した建設企業がある。2024年の建設人材育成優良企業表彰で国土交通大臣賞を受賞した東亜グラウト工業(東京都新宿区)だ。地盤改良や斜面防災、管路老朽化対策工事を手掛ける同社では、座学によるマネジメント研修や現場を模した自社訓練施設での技術研修、危険作業の疑似体験など、多岐にわたる研修機会を設けている。  同社はこの2~3年で急速に人材育成の仕組みを整えた。きっかけの一つは採用環境の変化だ。従来は新卒者に時間をかけて現場経験を積ませていたが、近年は中途採用のウエートが拡大。多様な人材の能力を適正に評価し、力量に応じた研修を提供するため、新入社員から一般~係長、中堅・リーダー職へと至る階層型の育成プログラムを整えた。  技術系の職員にもコミュニケーションや営業的な目線の座学・研修を行っている背景について、同社執行役員の宇野邦孝安全・品質部長は「ただの"現場屋さん"では困るからだ」と説明する。大手ゼネコンの1次下請けに入ることの多い同社では、技術者が元請けと2次下請け以下との間に立ち、時には発注者ともやりとりしながら工事を進める。現場人材の技術力をOJTで高めると同時に、多様な研修を通じてチームで働く視座を育てることが、企業の競争力に直結するのだという。  さらに、転倒や飛来・落下といった労働災害を疑似体験できる機器を導入し、全国の現場・拠点で「安全道場」を開催。現場経験の浅い新規入職者に労災の怖さを実感してもらい、危険予知の想像力を身につけるのに役立てている。  研修時間の確保は建設業界に共通の課題だ。同社では、工事が比較的少ない年度の上半期を中心に研修スケジュールを編成し、人材育成のための時間を確保している。主体的に通常業務の予定を調整し、研修に参加する社員も多いという。  建通新聞社によるアンケートでは、経験を積んだり、技術・資格の取得のため若いうちに長時間労働することについて、69・0%が肯定的だった。プライベートを重視するイメージの強い近年の若い世代も、自身のキャリアに役立つ能力開発には前向きだ。  東亜グラウト工業では会社全体で主体的にキャリア形成に取り組む「自律型人財」の育成を呼び掛けている。能力開発に前向きな意識の浸透が、社員一人ひとりの研修意欲の向上につながっている。