下水道法改正(4)老朽化から目をそらすな インフラの危機、直視すべき

中央

計画的なインフラ点検に苦慮する小規模自治体も多い

 改正下水道法は、法律の目的に「下水道の基盤の強化」を位置付けた。技術基準や点検頻度だけでなく、維持・更新工事の発注体制や事業費確保の仕組みを定めたのは、安定的な維持管理を担保するためだ。だが、事業基盤が揺らいでいるのは下水道だけではない。地方自治体の技術的・財政的な制約が厳しさを増す今、国土交通省はインフラ全体の機能を将来にわたって維持するための制度を作ろうとしている。  「われわれは崖っぷちにいる」。政策研究大学院大学の家田仁シニアフェローは、インフラ維持管理の方向性を議論する国交省の委員会でこう述べ、現状の体制に対する危機感を露わにした。  2012年の笹子トンネル事故を契機に、定期点検を踏まえて計画的な予防保全を実施する現行の維持管理体制が確立した。だが、国交省が都道府県・市区町村のインフラ管理部署を対象に実施した調査で「計画通り、着実に実施できる」と回答した割合は18%にとどまる。53%が不安を抱え、23%が「難しい」とするなど、点検を起点とする維持管理サイクルは揺らいでいる=グラフ。  特に、生活に密着した生活道路や上下水道、公園といったインフラを管理する市町村の置かれている環境は厳しい。前述の調査では、町の18%、村の52%で維持管理を担当する技術職員が一人もいなかった。設計図書の確認や関係機関調整が不十分で、建設業界から「工事に目が行き届いていない」との強い不満も聞かれた。  受注者側の課題も大きい。国交省の調査で、直近3カ年に維持管理・更新工事を発注する際に「不調が発生している」との回答は9%、「1社入札となっている」との回答は12%を占めた。山間地・離島の現場や、修繕など小規模工事で不調・不落が多発するとの指摘もあった。  国交省は解決策として、複数自治体や、道路と河川など分野の異なるインフラの維持・更新工事をまとめて発注する「地域インフラ群再生戦略マネジメント」(群マネ)の導入を急ぐ。発注作業や現場指示に伴う受発注者の手間を減らすとともに、ロットを大きくすることで受注意欲を喚起する。  一方、実際に群マネを活用したり、検討している団体は9%にとどまる。自治体からは、国・都道府県による導入支援や、インセンティブ設定を求める意見が寄せられた。  家田氏が委員長を務める国交省の委員会は今夏、インフラ維持・更新を高度化する「制度」を求める議論をまとめる。一部の意欲ある自治体のみが導入していた群マネも、制度的な裏付けを得れば普及に弾みがつく。自治体の財政支援をはじめとした予算確保や円滑な受発注の仕組みも盛り込む。  委員会は、建設業や関連業を「インフラマネジメント産業」と規定し、その発展を促す方針も打ち出した。地域の守り手としての社会的な重要性が増す一方、受注者にはロットの大きな工事への対応や新技術導入による効率化など、従来より高い能力が求められる。家田氏は、技術力や職員の育成力、設備投資余力の向上に向け「全国の建設業者の経営体質を改善しなくては」と訴えた。  増大する維持・更新工事の財源や、建設業の安定的な担い手を確保するには、国民のインフラへの関心を高めることが欠かせない。家田氏はインフラ老朽化の実態を広く発信する必要性を説くが、多くの自治体は「無用な不安・誤解を与える恐れがある」と公表を控えている。  老朽化という眼前の危機を直視しなくては、安定した維持・更新の制度を構築することはできない。埼玉県八潮市で発生した道路陥没事故の教訓を生かせるかが、全てのインフラ管理者に問われている。(この連載 終わり) ▼前回の記事はこちら▼ https://digital.kentsu.co.jp/articles/artcl_rglr/01KY3MVNXEH97H3Q4R3G91Y8D1 ▼連載記事を(1)から読む▼ https://digital.kentsu.co.jp/articles/artcl_rglr/01KXHHJM76X07QCYDP8DD96E0A