Catch-up<2024年7月~9月号>
建設業に関わるトピックスを分かりやすく解説するコラム『Catch-up』バックナンバーです。
「職域代表」の役割とは 「建設業界の代弁者に」 2024/7/26

現在、建設業界の職域代表として参院で議席を確保しているのは、自民党の佐藤信秋氏と足立敏之氏。建設業界の職域代表は、国土交通省の技官出身者から候補者を立てるのが通例で、佐藤氏の3期18年を引き継ぎ、後継として出馬する見坂氏も、近畿地方整備局長を5月まで務めた国交省技官出身者だ。
16年まで建設業界の職域代表として参院議員を務めた脇雅史氏は「建設業の代弁者として、国・地方の社会資本整備の重要性を訴えることだ」とその役割を説明する。建設業界が職域代表に最も期待しているのは、社会資本整備の必要性を訴え、毎年度の政府の公共事業予算を確保することだ。
地域の建設業の中からは「うちの会社は地方自治体の発注工事しか受注しない。国の予算が増えても仕方がない」という声がよく聞かれる。ただ、都道府県・市町村の公共事業の多くは、財源を国の交付金・補助金に頼っている。職域代表が国政の場で公共事業予算の確保を訴え、安定的に政府予算が確保されれば、地域の建設業の受注の安定にもつながる。
もう一つの大きな役割が公共工事の受注環境の改善だろう。佐藤氏と足立氏は「公共工事品質確保に関する議員連盟」に参加し、6月の改正品確法成立でも中心的な役割を担った。品確法は、2005年の制定時から、ダンピング受注の排除や適正な利潤の確保などを発注者に求め、特に自治体の公共事業の受注環境を大きく改善させた。
公共事業の量(予算)の確保に加え、質(受注環境)の改善も職域代表の大きな役割の一つだ。
比例代表の職域代表は、各地域の声に耳を傾ける選挙区選出議員と異なり、産業全体への貢献が問われる。来夏の参院選には、建設業界だけでなく、他産業の職域代表も出馬する。建設業界の職域代表が国政でどれだけの発言権を持てるのかは、業界の支持に左右される。
勤務間インターバル設定 休息で過労死防ぐ 2024/8/5

厚労省の調査によると、23年の建設業の月間総実労働時間数は168・9時間で、うち所定外労働時間は14・4時間。どちらも全産業の平均より長い。人手不足や短期の工期設定などを背景として、一人当たりの労働時間が長くなっている。勤務間インターバルの知名度は低く、建設業における導入企業の割合は1・5%と、全体平均の6・0%に比べて低い。
厚労省の担当者は、「人手不足などを理由に導入のハードルが高いと考える企業が多いが、制度の利用者を限定すれば導入しやすい業種ではないか」と話す。
制度を導入する事業主は、就業規則に盛り込む前に、具体的な制度設計を行う必要がある。制度の利用者について、勤務間インターバルを取得しづらい現場の技術者を除外するなど、制度を適用する対象範囲を職種や職階で限定することが可能だ。
また、災害時など制度が適用されないケースも設定できる。具体的なインターバルの時間数は指定されていないが、厚労省は終業から翌日の始業までに9~11時間のインターバルを設けることを目安とし、中小企業事業主に助成金を支給している。
勤務間インターバルは、労働者の生活時間や睡眠時間を確保し、健康状態を維持するための制度だ。8月2日に閣議決定された「過労死等の防止のための対策に関する大綱(過労死大綱)」にも勤務間インターバルの制度導入率の向上を盛り込んだ。
制度を導入した企業の従業員は、睡眠の量・質の改善に役立つ。長時間の睡眠と休息が取れれば、睡眠不足の解消や、ストレスの低減、メンタルヘルスの不調を含む病気欠勤回数の抑制につながり、ひいては過労死件数の減少にもつながる。
過労死は、時間外労働の上限規制の原点とも言える。過労死大綱では、28年までに労働者30人以上の企業で、制度を導入している企業割合を現在の6・0%から15%以上にまで引き上げる目標を掲げた。
デジタル資格者証が主流に 建設業は25年度発行可能に 2024/9/30

国家資格のデジタル化によって、資格保有者はいつでもどこでも無料で登録情報を確認できる。最も特徴的なメリットはデジタル資格者証を発行できることだ。PDF形式のデータで、印刷やメールでの送付が可能となる。
デジタル資格者証には資格名や氏名、登録番号、資格情報を検証できる2次元コードなどが掲載されている。デジタル資格者証の提出を受けた側は、2次元コードを読み込み、資格の有効性をリアルタイムで確認できる。無効の場合は無効となった理由も分かる。
デジタル庁の担当者は、「現行の資格者証に比べ、デジタル資格者証は改ざんできない仕組みになっている。一級建築士などの業務独占資格の場合、資格者証を提示する際には書面よりもデジタルの方が信頼性が高くなる」と話す。
また、登録申請に必要な書類の提出・修正や、登録手数料などの支払い、結婚・引っ越し・死亡時の手続きが全てオンライン上でできるようになる。今年8月には介護福祉士など4資格のデジタル化が始まり、すでに数千件の申請があるという。
国家資格のデジタル化を利用するには、行政手続きのオンライン窓口「マイナポータル」での申請が必要だ。申請後、資格発行機関の名簿情報と照らし合わせ、3週間程度で手続きが完了する。
本年5月には、マイナンバーカードの全機能をスマートフォンに搭載できるようにする改正マイナンバー法が成立した。デジタル庁は今後、現行の資格者証の廃止も視野に、機械処理できる資格証明書の発行とスマートフォン搭載を検討する。