いま考える 建設業の働き方(3)変形労働時間、使いやすく 年間の労働時間より柔軟に
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建設業には、危険な仕事というイメージが根強く残る。長期的には減少傾向にあるとは言え、労働災害の発生件数は、今も全産業で最多だ。建通新聞社が学生300人に行ったアンケートでも、建設業に求める労働環境に「安全」を挙げる回答が多い。この数年の夏季の気温上昇も、現場の働き手の安全を脅かすリスクになっている。こうした中で、夏季の働き方を見直す「変形労働時間制」が注目を集めている。
1988年に労働基準法に追加された変形労働時間制は、繁忙期に長く、閑散期に短い労働時間を設定できるよう、週40時間の範囲内で労働時間を弾力的に配分できる。1年単位、3カ月単位、1カ月単位で勤務カレンダーを作成し、繁閑に合わせて労働時間を調整する。
レイビルド社会保険労務士事務所の加藤大輔氏は「もともとは、夏季休暇や年末年始など、年間の繁忙期が予測できる旅館業などで積極的に活用された制度」と話す。季節によって業務の繁閑が大きい企業が効率的に労働時間を配分し、年間の総労働時間を短縮する目的があったという。
厚生労働省の調べによると、変形労働時間制を適用している建設業は、企業別で52・0%で、1年単位の変形労働時間制を採用する企業が最多だ。
ただ、加藤氏は「建設業は年間を通じた繁閑を予測しにくく、本来はこの制度に向いている産業ではない」と見ている。
1年単位で変形労働時間制の適用を受ける場合、企業は労使協定を結び、就業規則に規定した上で、年間の労働日数や労働時間を記載した勤務カレンダーを労働基準監督署に届け出る。受注産業である建設業は、企業規模が小さくなればなるほど、年間の繁閑を読みにくく、1年単位でカレンダーをつくるのは難しい。
1日8時間・週40時間の法定労働時間を順守するため、1年単位の変形労働時間制の適用を受けている建設業は多いが、勤務カレンダーと異なる勤務実態になるケースも少なくないという。
ただ、昨夏の記録的な猛暑を受け、変形労働時間制が建設業の夏季の働き方を見直す代表的な政策として注目を集めている。全国建設業協会(全建、今井雅則会長)は、現行制度で「30日前」の届け出が求められる勤務カレンダーについて、事後作成や前日までの変更を可能とするよう求めている。現場単位での届け出や、労基署への届け出を省略するなど、手続きの簡素化も要望している。
屋外作業が大半の建設業では、猛暑だけでなく、降雪の影響も受けるため、労働時間を一律に削減することが難しい。変形労働時間制を活用しやすくすることで、猛暑によって作業効率が下がる夏季の労働時間を減らし、それ以外の時期に振り分けようという発想だ。
労働時間規制の見直しを議論してきた政府の日本成長戦略会議労働市場改革分科会は、6月2日にまとめた提言で、労働者の生活時間や勤務の予見可能性に配慮しつつ、「30日前」要件の見直しなどを検討すべきとした。夏以降、労働政策審議会で、法制化に向けた本格的な議論を始める。
法制度見直しの方針が示された一方、夏季の働き方の見直しには、労働時間減少に伴う技能者の賃金低下という、より大きな課題が残る。夏季の労働時間が減り、稼働が落ちれば、技能者を雇用する企業の出来高も減る。
変形労働時間制を活用したとしても、「夏に減らした労働時間を春・秋に振り分けるだけの受注を確保し、技能者に今まで通りの給与を払えるかは、雇用する企業しだい」(加藤氏)。夏季の新しい働き方を実現するためには、技能者の健康維持という最低限の課題をクリアした上で、処遇の確保というさらに高いハードルをクリアする必要がある。
