連載『縮小する公共投資』

 あらゆるモノの価格が上昇し続け、デフレ下で働いてきた現役世代が経験したことのない局面を迎えています。政府は景気拡大に伴って物価が上昇し、賃金も連動して上昇する「良いインフレ」へと経済を誘導しようとしていますが、直接投資である公共投資の予算に十分に物価を反映できていません。連載企画「縮小する公共投資」では、実質事業量の減少が公共事業と地域建設業にもたらす弊害について解説します。
(全6回)
(1) 「安定予算」が招いた受注減 中東情勢悪化で広がるひずみ

(1)「安定予算」が招いた受注減 中東情勢悪化で広がるひずみ

2010年代、公共事業費削減の流れに歯止めを掛けるため、政府は「安定的」「持続的」をキーワードに公共事業費を確保してきた。デフレ下では機能したこの考え方は、インフレ局面に転じた2020年代に入り、公共投資に〝ひずみ〟をもたらしている。中東情勢の先行きが見通せず、原油関連製品の供給難とさらなる物価上昇への懸念が高まる今、このひずみはさらに広がろうとしている。

(2)取り残された建設業 「生産性向上の原資が必要だ」 全建 今井雅則会長

(2)取り残された建設業 「生産性向上の原資が必要だ」 全建 今井雅則会長

物価高騰と予算の制約によって公共投資が縮小する「実質事業量の減少」は、建設業の経営にどのような影響を与えているのか。全国建設業協会(全建)の今井雅則会長=写真=は「公共事業費の絶対量が不足しているのか、充足しているかは分からない。ただ、現実として地域建設業の受注は減り、利益率も伸びていない」と話す。建設業が持続可能となるよう「労働生産性を向上させる原資を得られる環境をつくるべきだ」と訴える。

(3) 相次ぐ庁舎建設計画見直し 公共建築は「オーバースペック」

(3)相次ぐ庁舎建設計画見直し 公共建築は「オーバースペック」

全国各地の地方自治体が、既存施設の老朽化に対応するための新庁舎整備の実現に苦慮している。その主な要因が、物価や人件費の上昇に伴う事業費の大幅な増額だ。市民からは事業費の妥当性や財政負担への懸念の声も寄せられる。建設プロジェクトのマネジメントを手掛けるインデックス(東京都港区)の植村公一社長は、公共工事の実情を踏まえて「公共発注の在り方を再検討すべきだ」と指摘する。

(4)都道府県の投資的経費 予算増額も物価高吸収できず

(4)都道府県の投資的経費 予算増額も物価高吸収できず

47都道府県の2026年度当初予算は、投資的経費の総額が7兆7387億円となり、5年前の22年度と比べ11・8%増加している。政府の公共事業関係費は同じ5年間で0・9%の増加にとどまり、都道府県予算が政府予算の伸び率を大きく上回っている。地方自治体が管理するインフラは老朽化が進み、更新需要が年々高まっている。一方、政府予算は横ばいで推移し、国庫補助や交付金の額も大きく変動していない。物価上昇に合わせて単独事業費を上積みせざるを得ない地方自治体が増えている。

(5)安定財源 税収か建設国債か 「当初予算化」にある障壁

(5)安定財源 税収か建設国債か 「当初予算化」にある障壁

防衛関係予算は、2026年度当初予算で9兆円を超えた(米軍再編経費含む)。防衛力整備計画に基づき、防衛関係予算は23年度以降、大幅な増額を繰り返している。それ以前は5兆円をわずかに上回る規模で推移し、公共事業費を下回っていた。一方、法人税や所得税の上乗せ分を財源とすることが決まった防衛関係予算と異なり、財源に裏付けのない公共事業費は6兆~6・1兆円の横ばいが続いている=グラフ参照。

(6)「物価高に合わせ増額予算を」 見坂茂範参院議員 積極財政追い風に事業量確保

(6)「物価高に合わせ増額予算を」 見坂茂範参院議員 積極財政追い風に事業量確保

2026年度当初予算の公共事業費(一般会計分)は前年度比220億円増となった。例年と比べれば大幅な増額だが、建設分野の職域代表である見坂茂範参院議員は、資機材価格の高騰や労務費の上昇を踏まえて「まだまだ不足している」とみる。国土強靱化や日本の経済成長に必要な公共投資を実現するため、「物価高に合わせて事業費が増えるようにしなくては」と説く見坂議員に、事業量確保の手立てを聞いた。